戒名・法名の謎

NHKクローズアップ現代」で、高額な戒名料が問題にされたのは、平成10年のことであった。
あれから、寺院経営をとりまく環境は刻々と変化し、「改革」が叫ばれるようになった……のであろうか?

今日、寺を維持する経営は、御多聞にもれず、なかなか厳しいらしい。もともと十分な不動産があって、半ば不動産業を兼業できるような寺は別だが、現代人の生活が葬式以外では寺から遠ざかるようになると、十分にお布施を集めるのも難しいわけだ。戒名の文字ひとつについて、なぜあれほどのお金がかかるのか合理的に説明できる人はいないから、このようなところでも遠からず「価格破壊」が起こらざるを得ない。
 友人の一人は、仏教界でも宗教改革が必要なのではないかと言う。
 だがいかにして?

 寺の経営(教会と信仰)


なるほど、戒名料について、合理的な説明などできはしない。
だからこそ、寺側としては妥当な金額であっても、遺族にとっては高額に感じて、戒名の値段をめぐるトラブルが起きる。

戒名料は、宗派やお寺の格によって、値段は異なるが、首都圏で最も一般的な戒名で相場は30万円前後。
ある調査では、半数近くの人が戒名は高いと感じていることが明らかになっている。
戒名は本当に必要なのかという疑問の声さえ、出るのは当然。


GoogleやYahooで「戒名」を検索すれば、「宗派を問わず4万円。大正僧より授与 家族に大きな負担をかけない為にも」などといって戒名ビジネスの広告が出る始末。
やってられない。


戒名、法名は、元来、死者につける名前ではない。
戒名は天台宗真言宗などの聖道仏教で受戒した人に与えられる名前であり、浄土真宗法名は正しい信仰に入った人に師より授けられる名前である。
いずれも生前。


だからこそ、仏教とは「生前」に多いに用事のあるものである。
寺の経営は、本来は日常的な法話による布施によるものでなければならないのだ。
法話による布施収入が無くなれば、本来救いには無縁の「戒名・法名」を持ち出してきて、ビジネスにするのも、けだし末法の姿とも言うべきか。